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㈠ 内部取引に係る課税の特例等

1  非居住者の内部取引に係る課税の特例

⑴ 改正前の制度の概要

① 制度の概要

 恒久的施設を有する非居住者の平成29年以 後の各年において、その非居住者の事業場等 と恒久的施設との間の内部取引の対価の額と した額が独立企業間価格と異なることにより、

その非居住者の各年分の恒久的施設帰属所得 につき居住者に係る規定に準じて計算した各 種所得の金額の計算上、収入金額とすべき金 額若しくは総収入金額に算入すべき金額が過 少となるとき、又は必要経費に算入すべき金 額若しくは支出した金額に算入すべき金額が 過大となるときは、その非居住者のその年分 の恒久的施設帰属所得に係る所得に係る所得 税法その他所得税に関する法令の規定の適用 については、その内部取引は、独立企業間価 格によるものとされています(措法40の 3 の

3 ①)。

② 独立企業間価格

 独立企業間価格とは、内部取引が次に掲げ る取引のいずれに該当するかに応じ次に定め

る方法のうち、その内部取引の内容及びその 内部取引の当事者が果たす機能その他の事情 を勘案して、その内部取引が独立の事業者の 間で通常の取引の条件に従って行われるとし た場合にその内部取引の対価の額とされるべ き額を算定するための最も適切な方法により 算定した金額をいいます(措法40の 3 の 3 ②)。

イ 棚卸資産の販売又は購入 次に掲げる方 法

イ 独立価格比準法��一定の特殊の関係

(ロにおいて「特殊の関係」といいま す。)にない売手と買手が、内部取引に 係る棚卸資産と同種の棚卸資産をその内 部取引と取引段階、取引数量その他が同 様の状況の下で売買した取引の対価の額

(その同種の棚卸資産をその内部取引と 取引段階、取引数量その他に差異のある 状況の下で売買した取引がある場合にお いて、その差異により生ずる対価の額の 差を調整できるときは、その調整を行っ た後の対価の額を含みます。)に相当す る金額をもってその内部取引の対価の額 とされるべき額とする方法

ロ 再販売価格基準法��内部取引に係る 棚卸資産の買手が特殊の関係にない者に

対してその棚卸資産を販売した対価の額

(ロにおいて「再販売価格」といいま す。)から通常の利潤の額(その再販売 価格に一定の通常の利益率を乗じて計算 した金額をいいます。)を控除して計算 した金額をもってその内部取引の対価の 額とされるべき額とする方法

ハ 原価基準法��内部取引に係る棚卸資 産の売手の購入、製造その他の行為によ る取得の原価の額に通常の利潤の額(そ の原価の額に一定の通常の利益率を乗じ て計算した金額をいいます。)を加算し て計算した金額をもってその内部取引の 対価の額とされるべき額とする方法 ニ イからハまでに掲げる方法に準ずる方

ロ イに掲げる取引以外の取引 イイからニ までに掲げる方法と同等の方法

③ 独立企業間価格の推定

 国税庁の当該職員又は非居住者の納税地の 所轄税務署若しくは所轄国税局の当該職員が、

非居住者に内部取引に係る独立企業間価格を 算定するために必要と認められる書類又はそ の写しの提示又は提出を求めた場合において、

その非居住者がこれらを遅滞なく提示し、又 は提出しなかったときは、税務署長は、次に 掲げる方法(ロに掲げる方法は、イに掲げる 方法を用いることができない場合に限り、用 いることができることとされています。)に より算定した金額をその独立企業間価格と推 定して、その非居住者のその年分の恒久的施 設帰属所得につき居住者の課税標準の規定

(所法22)に準じて計算した金額又は純損失 の金額につき更正又は決定をすることができ ます(措法40の 3 の 3 ③)。

イ その非居住者のその内部取引に係る事業 と同種の事業を営む個人で事業規模その他 の事業の内容が類似するもののその事業に 係る売上総利益率又はこれに準ずる一定の 割合を基礎とした上記②イロ若しくはハに

掲げる方法又は上記②ロに定める方法(上 記②イロ又はハに掲げる方法と同等の方法 に限ります。)

ロ 上記②イニに規定する方法又は上記②ロ に定める方法(上記②イニに規定する方法 と同等の方法に限ります。)に類する一定 の方法

④ 質問検査権及び帳簿書類の留置き

 国税庁の当該職員又は非居住者の納税地の 所轄税務署若しくは所轄国税局の当該職員は、

非居住者が内部取引に係る独立企業間価格を 算定するために必要と認められる書類又はそ の写しを遅滞なく提示し、又は提出しなかっ た場合において、その非居住者の内部取引に 係る独立企業間価格を算定するために必要が あるときは、その必要と認められる範囲内に おいて、その非居住者のその内部取引に係る 事業と同種の事業を営む者に質問し、その事 業に関する帳簿書類を検査し、又はその帳簿 書類(その写しを含みます。)の提示若しく は提出を求めることができます(措法40の 3 の 3 ④)。

 また、国税庁の当該職員又は非居住者の納 税地の所轄税務署若しくは所轄国税局の当該 職員は、非居住者の内部取引に係る独立企業 間価格を算定するために必要があるときは、

その提出された帳簿書類(その写しを含みま す。)を留め置くことができます(措法40の

3 の 3 ⑤)。

⑵ 改正の内容

① 特殊の関係

 独立価格比準法及び再販売価格基準法によ る独立企業間価格の算定の前提となる「特殊 の関係」については、外国法人の内部取引に 係る課税の特例における「特殊の関係」のほ かに個人と個人及び個人と法人との関係も含 めることとされ、具体的に次のとおり定めら れました(措令25の18の 3 ①)。

イ 一方の者と他方の者との間に当該他方の

者が次に掲げるものに該当する関係がある 場合における当該関係

イ 当該一方の者の親族

ロ 当該一方の者と婚姻の届出をしていな いが事実上婚姻関係と同様の事情にある 者

ハ 当該一方の者の使用人又は雇主 ニ イからハまでに掲げる者以外の者で当

該一方の者から受ける金銭その他の資産 によって生計を維持しているもの ホ ロからニまでに掲げる者と生計を一に

するこれらの者の親族

ロ 一方の者と他方の者との間に当該他方の 者が次に掲げる法人に該当する関係がある 場合における当該関係(ハに掲げる関係に 該当するものを除きます。)

イ 当該一方の者(当該一方の者とイに規 定する関係のある者を含む。ロにおいて 同じです。)が他の法人を支配している 場合(注)における当該他の法人 ロ 当該一方の者及び当該一方の者とイに

規定する特殊の関係のある法人が他の法 人を支配している場合における当該他の 法人

ハ 当該一方の者及び当該一方の者とイ及 びロに規定する特殊の関係のある法人が 他の法人を支配している場合における当 該他の法人

(注) 他の法人を支配している場合とは、

次に掲げる場合のいずれかに該当する 場合をいいます(措令25の18の 3 ②、

法令 4 ③)。

ⅰ 他の法人の発行済株式又は出資

(その有する自己の株式又は出資を除 きます。)の総数又は総額の100分の 50を超える数又は金額の株式又は出 資を有する場合

ⅱ 他の法人の次に掲げる議決権のい ずれかにつき、その総数(当該議決 権を行使することができない株主等

が有する当該議決権の数を除きま す。)の100分の50を超える数を有す る場合

ⅰ 事業の全部若しくは重要な部分 の譲渡、解散、継続、合併、分割、

株式交換、株式移転又は現物出資 に関する決議に係る議決権

ⅱ 役員の選任及び解任に関する決 議に係る議決権

ⅲ 役員の報酬、賞与その他の職務 執行の対価として法人が供与する 財産上の利益に関する事項につい ての決議に係る議決権

ⅳ 剰余金の配当又は利益の配当に 関する決議に係る議決権

ⅲ 他の法人の株主等(合名会社、合 資会社又は合同会社の社員(当該他 の法人が業務を執行する社員を定め た場合にあっては、業務を執行する 社員)に限ります。)の総数の半数を 超える数を占める場合

ハ 租税特別措置法第66条の 4 第 1 項に規定 する特殊の関係

② 独立企業間価格

 内部取引に係る独立企業間価格について、

再販売価格基準法又は原価基準法における通 常の利益率の算定方法及び利益分割法又は取 引単位営業利益法による算定方法の細目が定 められました(措令25の18の 3 ③~⑤)。

③ 文書化

 内部取引に係る独立企業間価格の算定に必 要と認められる書類の提示又は提出が遅滞な く行われない場合には、比較対象者への質問 検査や推定課税がなされることとなりますが

(措法40の 3 の 3 ③④)、この提示又は提出さ れるべき書類は次の区分に基づき次のような 書類とされています(措規18の19の 3 )。

イ 内部取引の内容を記載した書類(措規18 の19の 3 一)

イ 内部取引に係る資産の明細及び役務の